密やかな独占欲

 それは、二人でオフを堪能していたとき。ソファに腰掛けながらのんびりとテレビを見ていたところ、不意にコウくんがそれに気付いた。

「……ん?」
「わ、コウくん?」
「どうしたんだ、これ」

 コウくんが指差した先にあるのは、スカートの裾から覗く赤く腫れた跡。所謂キスマークに見えなくもないそれを指摘されれば嗚呼、と小さく零しながら見せつけるようにスカートを捲り上げる。

「虫に刺されちゃったみたい。ほら、こないだのライブの時ロングとはいえスカートだったからさ」

 野外なのに虫除けし忘れた私が悪いんだけどね、と苦笑しながら言うと内腿に残された跡を親指で撫でながらコウくんはそうか、とだけ返事をする。その声色は何やら不機嫌そうで。コウくん、と名前を呼ぼうとすれば腕を引かれ強く抱き寄せられた。

「……虫とはいえ、嫉妬するな」

 俺以外が、お前に跡を残すなんて。
 密着した状態で紡がれる言葉に胸の奥からきゅうんと音が鳴った。同い年のはずのコウくんはずっと大人びてて、余裕があるように見えるけれど。こうしてただの虫にも妬く姿は年相応ですごくかわいいと思う。口に出したら拗ねられるから絶対に言わないけれど。思わずゆるゆると頬を緩めながらコウくんの首に腕を回して「私にはコウくんだけだよ」とだけ告げれば「じゃないと困る」と苦笑混じりの返答。

「なあ、
「ん?」
「俺も、ここに跡を残してもいいか?」
「えっ」
「……だめか?」
「だ、だめじゃない!けど!」

 あからさまにしょんぼりとされればぎょっとして思わずゆるしてしまうあたり私はチョロいと思う。ありがとう、と微笑むコウくんは床に座り込み私のスカートを捲りあげ脚を露出させた。そして、そのまま内股に顔を埋める。……分かってはいたことだが、この状況、すごく恥ずかしい。経験が無いわけではないけれど、こんなに明るい場所で致したことなんてないから。そんな私の心情を知らないであろうコウくんはちゅう、と何度も虫刺されの真横に吸い付いて皮膚を内出血させる。そして新たに咲いた赤い花に、嬉しそうに微笑んだ。
 その満足げな表情見れば、一人恥ずかしがってたこともなんだかどうでもよくなってきたから私はどこまでもコウくんに甘いなぁと思ったのだった。


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